【聴くなら毛布にくるまって】
『その対象から感じられる、
この世のものとは思われない恐ろしさ』
↑ 金田一京助氏編纂の国語辞典には、そんな解説がされています。
“これ”を感知すると、多くの人間は背筋に冷たいものが走り、四肢に緊張
が伝わり、息を呑んだり、目を瞠らせたりします。
“これ”。すなわち“鬼気”。
真夜中の森。丑三つ時の墓地。肉食獣と視線が合わさった時。
そんな状況で感じる得体の知れない恐怖はまさにこれ、“鬼気”によるもの
ですね。背中・肩のT ゾーンに走る“ぞわぞわぞわ〜”っていうヤツです。
しかしながらこの“鬼気”。全く別の場面でも感じることがあります。
スポーツのスーパープレー。ドラマの大どんでん返し。名画。名品。
予想を遥かに凌ぐ展開や技を目の当たりにした時も、この“ぞわぞわ〜”
がやってきます。「うわ…こ、こんなんアリかよ〜!」っていうヤツですね。
私は感じました。このPHILIPPE SAISSE(フィリップ・セス)の'95年
リリース作品"Masques" で。その鬼気を。
↑ オープニング曲"Me & The Boyz" からもう鬼気全開ですよ。
軍隊行進のようなドラムに、重厚な響きを備えたアップライト・ベースが
黙々と連動し、その上へ分厚いホーンが加わります。クリス・ボッティの
ニヒルなトランペット、アンディ・スニッツァーのアルトサックス、暴力的に
鋭いロジャー・ローゼンバーグのバリトン・サックスで有無を言わさない
圧力を加えておいて、そこにセスの光量のある鍵盤が乗っかるんだから、
その美しさはこの世のものとも思われません。“ぞわわわわ〜”ですわ。
30秒ファイルだと伝わらないかもしれませんが・・・。
↑ アルバムのタイトル・チューンとなる"Masques" 。比喩として適当か
どうかわかりませんが……衛星軌道上で宇宙遊泳しながら、地球を眼下
に見下ろしたらこんな気持ちになるんじゃなかろうかと。とにかく、凄まじく
無機質かつ感傷的な世界観です。存在するのはセスのシンセサイザー、
ピアノ、打ち込みのリズム。そしてピノ・パラディノの無機的なフレットレス・
ベースだけ。その心象風景的な音楽世界たるや、またもやこの世のもの
とは思われません。まさしく悪夢のような美しさ。“ぞわわわわ〜”ですわ。
さ…30秒ファイルだと伝わらないかもしれませんが・・・。
↑ "Madison Rose" は、セスのプレイヤーとしての力量、アレンジャー
としての引き出しの多さ、メロディ・メーカーとしてのインデビジュアリスム
を惜しげもなく披露したトラックです。大きく分けて三部構成となっている
楽曲のクライマックスは、開始2分2秒からセスのソロへとつながる40秒。
「アンタ、どーいう勉強をしたらそんなフレーズが思い浮かぶワケ!?」
と小一時間説教したくなる美メロのゲリラ雷雨。その場面転換の見事さ、
潔さ、悪夢のような美しさは、やっぱりこの世のものとも思われません。
30秒ファイルだと絶対伝わらないから、もう買っちゃいなよ!!(友達か)
ちなみにこのアルバム、セスの才能と人脈を想像させるに十分な豪華ゲ
ストが多数参加しています。
上に挙げたクリス、アンディ以外にも、ケニー・ギャレット(ss)、ヴィクター・
ベイリー(b)、ビル・エヴァンス(ss)、マーカス・ミラー(b)、ジョナサン・バト
ラー(ag)、カーク・ウェイラム(ts) …と、さながらスムースジャズ・フェスの
納会のごとき大規模レコーディング。この世のものとも思われません。
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Author:ヤセガエル
神奈川県在住の一般市民(♂)。このブログで、音楽・
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音楽は、主にスムースジャズを中心に、オススメCDのレビューとオリジナル・コンピを。動画はYouTubeから。サッカーは、代表チームのゲーム・レビューをできるだけ前向きに(笑)書き綴っていこうと思っておりますので、生温かく見守ってくださいませ。
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