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ハイ。サブタイトルにある『野望を砕く』の件です。
この作品が発売された当時、私は、ある営業会社に勤めておったワケなんですが、そこの先輩に、非常~に美しい女性社員がいたんですね。
すでに歴としたカノジョがいた私とはいえ、多くの男性社員たちから 「女房と子供を売ってでもお願いしたい!」と言わせる程の佳人である彼女には、私もそれなりに(小さい小さい)野望を持っておったんです。(『信長の野望 ~天道~ for Windows』:コーエー)
J智大学卒の帰国子女で、営業成績は全国でも常にトップ3(ほとんどの場合1位)。父親はオランダ人、母親は日本人。ニコール・キッドマン似…ということ以外の情報が無いミステリアスな彼女は、中途採用の新人研修を終えたばかりの私にとって、文字通り雲の上の存在。本来であれば野望を持つことはおろか、挨拶できるだけでも御の字というくらいの距離が、そこにはあったのです。
ところが、神様というのは、時にイキな計らいをして下さるものですね。
そのニコール先輩(仮名)が、どういう訳か、ある営業プロジェクトの自分のパートナーに、この私を指名してきたのです。
まさしく寝耳に水。棚からぼたもち。ひょうたんから駒。そのご指名が営業マンとしてどれだけ名誉なことなのか、男としてどれだけ幸運なことなのか、そして自分が、他の男性社員たちにとって、どれだけ激しい嫉妬と羨望の的になったのかを、憎悪に満ちた視線と共に贈られる多くの「おめでとう」から、私は感じ取ったものです。
・・・・・・
ニコール先輩の仕事ぶりは大変勉強になりました。営業スキル、仕事観、実績も経験も、スピードもキレも到底私の比ではありません。コンビを組んだとはいえ、ほとんど先輩に“おんぶにだっこ”状態だった私を、叱りもせず、グチもこぼさず、時に的確なアドバイスを授けながら仕事をこなす彼女を、私は尊敬と感謝、そして(だんだん大きくなってきた)野望を抱きつつ見ていました。
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ある大きな新規契約を成立させた日の夜。祝杯を上げようと誘われた六本木のレストランで、私はニコール先輩と、初めて仕事以外の多くの話題を共にすることができました。
先輩が、日本名とオランダ名の二つの名前を持っていること。
先輩の父親は軍人で、母親は看護士であること。
大学時代はスウィングジャズの同好会でヴァイブを担当していたこと。
セクハラの憂さ晴らしで首都高速を爆走し、一発免取りになったこと。
私を指名したのは、昔大好きだったカレシと似ていたから(笑)ということ。
初めて聞くニコール先輩の華やかな歴史、そして仕事モードとは明らかに異なる、無邪気でキラキラと輝く笑顔に、私はノックアウト寸前でした。
膨張してゆく野望を 抑えつつ食事をすること小一時間。いつしか話題は音楽方面へと流れていき、それぞれ愛聴してきたアーティストやアルバム、楽曲などの話題が出始めました。
双方ともに楽器の経験があり、音楽には一家言ある二人。始めの和気藹々たる自己紹介も、やがてミュージック・ポリシーの披歴・展開へと変化し、やがてそれは抜き差しならない激しい議論へと発展していきます。
果ては「アルトサックスとソプラノサックスは、どちらが主役として優れているか」という、絶対に答えの出ない命題が提言されると、議論はさらにエスカレート。ソプラノ支持派の私と、アルト支持派のニコール先輩で、
「ソプラノが最高!!」
「アルトには敵わないのー!」
アルコールの勢いも手伝ってか、会社の先輩後輩だとか、仕事のパートナーなどという立場をすッ飛ばして激論する二人。お互い意固地になって解決のしようが無くなってきたところで、先輩が提案をしてきました。
「ヤセくん、そこまで言うなら、私が気に入るソプラノサックスの作品を持ってきてよ。言っとくけど、コルトレーンもケニーGも、私ダメだったから」
「上等ッす。先輩が涙を流して感動する作品を持ってきますよ」
「もし駄作だったら、ヤセくん、一生私のドレイになってね(←酔ってる)」
「その反対だったら、ニコール先輩をドレイにしますから(←酔ってない)」
さあ、そこでです。ようやく登場しますよ。この作品が。
MARION MEADOWSの"Body Rhythm"が。
やはり、相手がたとえ尊敬する先輩であったとしても、挑まれた勝負には勝利したい。負けた時のペナルティも甘美だけども、勝った時のご褒美はそれ以上。ココは('95年当時)最新のキラーチューンをぶつけて、先輩を「あふん」・・・じゃない、「ぎゃふん」と言わせたい!…そこで選ばれたのがこの作品"Body Rhythm" だったのです。
その翌週、約束通り、この作品はニコール先輩の手に渡されました。
「先輩、きっと後悔すると思いますよ」
「フフン、ヤセくんこそ覚悟しなさいよ」
・・・・・・
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・・・・・・・・・・
それから三日後。
運命の瞬間はやってきました。
・・・・・
私と先輩、それぞれ別々の担当業務を終えた週末の夕暮れ。
合流先のカフェ。緊張の面持ちで相対する二人。
果たして、マリオンのソプラノは、先輩の琴線に触れたのか否か?
ドレイになるのは自分?それともニ、ニコール先輩?
オーダーしたエスプレッソとラテがテーブルに運ばれた直後、先に口を開いたのはニコール先輩の方でした。
「ヤセくん…あのね…」
言うが早いか、先輩は、バッグから丁寧にラッピングされた品物を取り出し、テーブルの上に置くと、いきなりペコリと頭を下げたのです。
「ヤセくん…これ…」
「・・・??」
「あの…これ…」
先輩は頭を下げたまま。
(こ…これは…。ももも…もしや、『参った』のポーズ?オレの勝ち!?)
躍り上がる気持ちを抑えつつ、先輩の美しいナチュラル・ブラウンの髪に視線を落としていた私が次に聞いた言葉は、全く予想外のものでした。
「…ん~~、ごめんなさいっ」
「・・・へ?」
「ヤセくん、ゴメン!」
「はぇ?」
「とりあえず、この中のモノ見て!」
・・・・・・・
品良くラッピングされた袋の中には、先日、私が先輩に渡したマリオンのCDが入っていました。しかしそのCDは、私が渡した時の状態とは激しく異なる、誰が見てもアッと驚く大変な状態になっていたのです。
すなわちジャケットの表紙に、赤いマジックペンで、明らかに文字を覚えたての幼児が書いたであろう雄渾・奔放な筆跡で、
・・・・・・
ウルトラマソ。シユワチ
…と、イタズラ書きされていたのです。似顔絵付きで。( ´ д`)
・・・・・・・
「ヤセくん、ごめん!知らない間にウチの子が悪さしちゃって」
「えッ!?『ウチの子』!?」
「そうなの。最近何にでも落書きしちゃうのよねぇ」
「えええ!?先輩、お子さんいたんスか!?」
「あら、言ってなかった?3歳と5歳。父親は家出しちゃったけど」
「3歳と5歳…ふ…二人も…。そんでもって…い、家出て」
「ほんと、ごめんねぇ。こんなになっちゃってショックだよね」
「…そ、そうスね…(別の意味でショックです…)」
「でね。これ、新しいの買ってお返ししますから」
「…いえ、いいッス。そんなの気になさらなくても」
「そんな、じゃぁ今から買いにいこ?」
「…いえいえ、いいッスよ。コレで。似顔絵も、なんかカワイイじゃないですか。ウルトラマンと言うより、怪獣みたいで。アハハハ・・・」
「…あ、そうだった。怪獣といえば、あの…裏表紙にもね…」
・・・・・・・・
バルタソセイジソ
…セットになってたのね…。ご丁寧にありがとうございます…。( ´ д`)
でもニコール先輩。お子さん、『ン』の表記間違えてますから…。
・・・・・
なんという結末。なんという神様のイタズラ。
初めはそう思いました。
しかし、私はすぐに気付いたのです。
これはきっとイタズラではなく、ニコール先輩のジュニアたちが、私のドス黒い野望に気付き、反撃を加えてきたのだと。すなわち、
「ボクらのママに手を出すな」という意思表示であると。
そう、私の、先輩にかしずく夢は破られ、野望もまた砕かれたという訳なのです。(『火遊びはだめ 』(ハーレクイン・ロマンス))
その後、ニコール先輩と私は、どちらかが一方に隷属するというカンケイではなく、仕事上での重要なパートナーとして約一年を過ごしました。
あれから14年。私の夢と野望を砕いた二人のキッズは、おそらく、17歳・19歳の好青年に成長していることでしょう。時は流れましたね。
今回は(も)全然レビューになってなくてスミマセン。せめて試聴ファイルをループ聴きしていただいて、そのマリオン節をお楽しみくださいませ。
★★★★ 収録曲はコチラ ↓ ★★★★
01.My Cherie Amour
02.Be With You
03.South Beach
04.Later on
05.Get Involved
06.One More Chance
07.Kool
08.Marion's Theme
09.Wanna Be Loved by You
10.Body Rhythm
11.Deep Waters
12.Summer's Over
13.The Lift
★★★★★★★★★★★★★★★
ご訪問ありがとうございました!
ちなみに、キャプしたジャケットは、
先輩からのプレゼント(落書き無しバージョン)です。
最後までお読みくださった皆様、
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テーマ : SMOOTH JAZZ ジャンル : 音楽
Author:ヤセガエル
神奈川県在住の一般市民(♂)。このブログで、音楽記事、音楽機材、星空や夜景の話題をお届けいたします。
音楽は、主にスムースジャズを中心にオススメCDのレビューを。音楽機材は、趣味のDTM・DAW、ベース、ギター、サックス等を取り上げています。
流星群情報も定期的にUPしていますので参考にしてくださいね!
仕事中なのに読みふけっていました(笑)。
「バルタソセイジソ」・・・いいなぁ(笑)。
その落書きジャケットを是非見てみたいものです。
それにしても、独身だと思っていた女性が結婚していた、しかも子持ちだった時のショックは大きいですよね~。
私も何度そんな目にあった事か・・・トホホ。
でも私の場合は逆に燃えるタイプなので、アタックしまくっていましたけどね(笑)。
ハッハッハッハッハッハッハッ!!(←バルタソセイジソ風)